「毒になる親」を読む
「あなたのために」と言って自分の要求を子供に押しつける親がいる。
「あんたのせいで俺の人生は思うようにいかないんだ」と言って子供を非難する親がいる。
「お父さんはお前を愛している、だから怖がらなくていいんだよ」と言って娘の体を奥深くまでまさぐる父親がいる。
子供はそれを当たり前のように受け入れる。おかしいと思っても、「それは自分のせいだ」と思うようになってしまう子供がいる。
この本の著者は、そんな子供の気持ちを救い、「あなた達の親は毒を持った親だったのだ」と教えようとする。
どんな親も子供に対して多かれ少なかれ何らかのコントロールをしている。ただそれも子供が自立できるまでの間に限る。子供が少しずつ自分で物事を決めたり行動できるように伴って、そのコントロールを減らしていくのが基本だ。
しかし「毒になる親」にはその歯留めがきかない。
「子供は親に従うものだ」だとか「おまえ(子供)のせいで私の人生は狂わされてしまった」「あなたがいなければもっと楽しく暮らせるのに」
そういう言葉で自分の責任を子供に押しつける。
そして暴力、育児放棄。
社会的にはそれなりに成功している人が、何かの拍子に体調が崩れたり精神的に不安定になったりする。子供や配偶者に優しくできなかったりする。
その原因が育った環境(つまり親)にあったかもしれないのだ。
カウンセリングの中で浮き出てくる過去の記憶・・・表面上は親を敬ったりかばったりしていたものが、実はその裏で親を憎み、恨んでいたことが分かる。
虐待していた親に子供が どう対応するか、というのは別の本にも書かれているが、この本での対応として、「親を許さなくてもよい」ことだ。
親を許すことを目標にすると、心の中に潜んでいた親への恨みを出しきれず、再び親をかばってしまうようなことがあるらしい。
この本の中では、子供が親のコントロールから抜けだして、自らの頭で考え、決断できるようになる勇気を持つことが大切だ、と説いている。
さて、特に気に入った部分を書き出しておく。
「子供に謝れる親になる」
「毒になる親」の特徴のひとつに、彼らは自分たちのしたひどい行動について、まずほとんどと言っていいくらい謝らないということがある。だからこそ、もし子供を傷つけたと思った時には謝る、ということが、「毒になる家系」の毒素を次の世代に伝えないようにするための重要な行動となる。
子供に謝ることのできない人というのは、愛情が欠けている人間である。そういう人は、そんなことをしたら面目を失うとか、軟弱さの証拠だとか、親の威厳がなくなると恐れている。だが事実を言うなら、子供というのは誤った親を見下すようなことはしないばかりか、かえってそういう親を以前にも増して尊敬できるようになるものである。子供ですら、間違いを犯した時には謝ることができる人というのは人格者であり、そういう行動は勇気がある証拠だと感じるのである。おざなりでなく、本心から謝罪するということは、お互いの心を癒し、「毒になる親」の輪廻を断ち切るための最もすぐれた行動である。
だから、親ももう少し肩の力を抜いて、子供に自由を与えてあげるべきなのだ。
親は子供に最終的な責任を取れればいいのだと、個人的に思う。
親に虐げられてきたと思う方、子供や配偶者とコミュニケーションがうまく取れないと思う方、そして親に趣味の宗教を押しつけられた方、ぜひ読んでいただきたい。
「自分の親には感謝しているし、今の生活も充実している」と思っている方にも読んでいただきたい。
親は多かれ少なかれ子供をコントロールしたがるもの。その事実を受け入れられず、子供が自分にウソをついている可能性だってあるのだ。
正直なところ、自分も「もしかして親の毒を受けているのか」と自問している。
妻の欠点ばかりをみつけてけなすような態度は、完璧(言い過ぎ)な母と妻を比べてしまうからではないか、と思ったりしている。
妻にも勧めるつもりだが、読んでくれるだろうか・・・?