中東書記(聖書と呼ばれる書き物)を読まない男、紙様にぼやく

本、新聞などの記事について もごもごと感想を書きつつ、どこぞのカルト宗教に取り込まれてしまった方々についてぼやいております。

「銀河英雄伝説」と現代社会

朝日新聞11月4日(金)の朝刊に「銀英伝が問う 民主主義」という記事が載っていた。

www.asahi.com

 

1980年代に刊行されたものだが、自分も10年ほど前にふと読み始めて相当はまっていた時期があった。図書館で借りて一度読むだけでは満足できず、しばらく間を置いてもう一度読んだ。

銀河英雄伝説 - Wikipedia

 

銀河系に人類が進出した後、専制君主制の銀河帝国と、それに抵抗する自由惑星同盟との戦いを描いたものだ。

帝国も同盟も上層部(貴族や政治家)の腐敗が進み、両軍の宇宙戦争も惰性に近いような状態。そこに戦争の天才・ラインハルトと不敗の魔術師・ヤンが登場する。

ラインハルトは上級貴族優位だった帝国の組織にならわず、有能な人材は積極的に取り入れた。軍事ばかりでなく政治手腕にも長けた彼は、軍ばかりでなく民衆の支持をも集めていく。最終的にこれまでの皇帝を打倒し、自らが皇帝となる。

 

ヤンの所属する同盟は、ヤンの勝利?に気を良くし、無能な政治家に煽られて無能な軍上層部による無謀な遠征を行って大敗。さらにラインハルトの策略によってクーデターが発生し、どんどん疲弊していく。しまいには同盟の首都を占領され、事実上崩壊してしまう。

それでもヤンは民主主義を守ろうとする。

 

こんなセリフがある。

「腐敗した民主すぎと清潔な独裁政治のいずれをとるか、これは人類社会における最も回答困難な命題であるかもしれない。」

kotobanosusume.com

 

銀河英雄伝説」を読んでいて、腐敗しまくった同盟よりも、ラインハルトの導く帝国の方がよりよく生きられるのではないか、と思う時がある。

しかしそれが正しい選択なのだろうか。

トランプ大統領を崇拝する人たちは「彼は民衆の味方だ」というが、それがいつまで続くか想像したことはあるだろうか。かなり感情的に物事を判断し、自分に反対する相手にはとことん冷たい対応をする彼が、突然民衆を切り捨てる可能性だってあるのだ。

 

あくまでも小説の世界の中でだが、ラインハルトの支配する帝国で彼に従っていれば、少なくとも彼の存命中は幸せに生きることができたかも、なんて思う。

ただ、ラインハルトの後継者がラインハルトと同じ思想かどうかは分からない。民を思いやらない独裁者に変貌することだってあるのだ。独裁国家になった場合、国家の体制を変えるためには独裁者を打倒しなければならなくなる。結局争いが起こるだろう。

 

民主主義もそれが理想の社会の姿なのか、あやしくなりつつある。それに変わる政治体制が生まれる気配もない。むしろ相手をこきおろすことで自分(の国家)が優位になろうとする権力者が増えている。

 

自らの支持する君主から「敵を倒してこい」と言われることのない国でいたいものだ。

 

もしこの本を世界の人々が読んで戦争反対の波が上がるのなら、著者の田中芳樹さん

 にノーベル文学賞を与えていいと自分は思っている。

少し前から週刊YOUNG JUMPでも連載が始まった。新制作のアニメも放送されている。

こんな時代だから、なのか。

         なんだろう。