中東書記(聖書と呼ばれる書き物)に興味のない男、紙様にぼやく

本、新聞などの記事について もごもごと感想を感想を書きつつ、どこぞのカルト宗教にマインドコントロールされてしまった方々についてぼやいております。

パン屋と天使

あるところに小さなパン屋さんがありました。

一人暮らしのご主人が、毎日せっせとパンを作っていました。

パンはとてもおいしく、評判のお店でした。しかし評判なのはおいしいばかりでなく、ご主人がいろいろな形のパンを焼くからでした。

丸はもちろん三角や四角のパン、鳥や牛、ライオンのパン、何でも自在に作ります。お客さんが注文すれば、それに合わせて希望の形のパンを焼いてくれるのです。

朝、学校へ行く子供たちがパン屋さんに立ち寄りました。

「おはようおじさん、今日はおひさまのパンを作っといて!」

「おれはヘビパン、すっごく長いやつ!」

「わたしはチューリップパン!」

「はいよ、学校が終わるころまでに焼いとくからな。いってらっしゃい。」

 

そんな状態で、ご主人は朝から晩まで忙しく働いていました。

 

ある日、お店に顔色が悪く、黒い服に黒い帽子をかぶった小さな男の子がやってきてか細い声で言いました。

「こんにちは。おじさん、ぼくにそっくりなパンを焼いてください。」

ご主人はおや、と思いながらも

「はいよ、夕方までには作っておくよ。」と快く応えました。

ご主人はその男の子の顔を思い浮かべてパンを作りました。ただ、お店で会った時の暗い表情ではなく、にっこりと笑った顔にしてパンをかまどに入れました。

 

夕方、男の子がお店に現れました。

「いらっしゃい。はい、ご注文のパンをどうぞ。」

パンをしばらく眺めていた男の子の顔がぱっと明るくなりました。

その背中から漆黒の翼が伸びた次の瞬間、男の子は空に舞い上がりました。

「おじさん、素敵なパンをありがとう!」

男の子の笑顔はご主人のつくったパンそっくりでした。

 

「おじさん、お礼にひとつ願いごとをかなえてあげるよ」

ご主人はしばらく考えましたが

「今は何も思い浮かばないなあ。だけど君やお客さんの笑顔が見られれば私は幸せだよ、ありがとう。」と男の子に向かって叫びました。

 

男の子はしばらくとどまっていましたが、もう一度ご主人にお礼を言うと空高く飛び去って行きました。

 

ご主人は、不思議なこともあるものだと少しの間ぼーっとしていましたが、すぐにまたパン種をこね始めました。

 

 しばらくたったある日、真っ白な服に真っ白な帽子をかぶった男の子がお店にやってきて言いました。

「おじさん、ぼくと同じ姿のパンを作ってもらえますか。」

ご主人は数日前のことが頭に浮かびましたが、

「はいよ、夕方までには作っておくよ。」と快く応えました。

ご主人は男の子の姿を思い浮かべました。体つきは子供なのに、顔は非常に整った大人のようでした。その姿に極力近づけようと、ご主人はお昼も忘れてパン種をこねました。そして数日前と同じようににっこり笑った顔を作りました。

 

夕方、男の子がお店に現れました。

「いらっしゃい。はい、ご注文のパンをどうぞ。」

パンを一瞥した男の子の顔が険しくなったかと思うと、その背中からまばゆいばかりの真っ白な翼が伸び、男の子は空に舞い上がりました。

「貴様、全然私に似てないパンを作りおって!!!」

男の子の顔はパンに作った笑顔からはまったく想像できないほど怒りに満ちた表情でした。

 

男の子が天空に指を向けると、空がにわかにかき曇り、巨大な稲妻がお店に落ちました。

ご主人があわててお店を出た次の瞬間、お店は炎に包まれました。

 

「ははははははは・・・私と同じパンを作らなかった罰だ!」

男の子は笑いながら天空へと去って行きました。

 

灰になったお店を前にして、ご主人はへたり込みました。

「ああ・・・私はただ、みんなに喜んでもらおうとしていただけなのに・・・」

 

 

ご主人のそばに、黒い服を着た男の子が現れました。

「おじさん、ぼくの仲間が悪さをしてしまってごめんなさい。でも大丈夫、おじさんの願いをかなえる約束だったからね。」

そう言って男の子が手をかざすと、灰が舞い上がり、見る間に元のパン屋のお店に戻りました。

 

「おじさんのパンがあんまり僕にそっくりだったんで、仲間に自慢したんだ。そしたら焼きもちを焼いた仲間がおじさんにひどいいたずらをしてしまった。本当にごめんなさい。」

「うん、もういいんだ。元のお店でパンが焼けるだけで私は十分満足だ。またおいで、とびきりおいしいパンを焼いて待っているからね。」

「ありがとうおじさん、楽しみにしてるよ!」

男の子はゆっくりと空の果てに昇って行き、見えなくなりました。

 

それからもご主人のお店は繁盛しつづけました。

黒い服の男の子も白い服の男の子もお店に現れませんでしたが、時々お店に近づく白いハトをカラスが追いかけ回しているのを子供たちが見かけていたそうです。

 

 

おしまい