「百年法」を読む
エホビアンの憧れる「楽園」。不老不死となるらしい彼らが「永遠」という時間の長さを深く考えもせずにはしゃいでいるのを見て愚と感じる。
そんな中で読んだのが、山田宗樹著の「百年法」だ。
人為的なウイルス感染によって不老化できるようになった人類。しかし不老化した者は100年後に死ななければならない法律が存在した。
敗戦後から21世紀前半にかけての物語。
現実的に考えれば、死なない人間が増えれば人口は増えるばかりで減ることがない。男女の生殖行為を制限でもしなければ人口はとめどもなく増えていく。その上での「百年法」は理にかなっている。
それを受け入れられない(特に)政治家、自分が礎になることで百年法を成立させようとする官僚。様々な人々の思いが交錯するストーリー。
現実化することで浮き上がる問題もある。現実世界ではそういう問題を解決することが重要になる。少なくとも現実世界で紙は助けてくれない。
そしていつまでも生きている人間の弊害を、この本は鋭く指摘している。
世代交代があってこそ、新しい考えや行動ができる。
さて、エホビアンのいう不老不死の楽園は、いつまでも楽園でいられるのだろうか。
「エホバがどうにでもしてくれる」というのはエホビアンの常套手段だが、時には冷静になって考えてみるといい。
少なくとも現在のエホビアンが神の声を聞いたこともなければ神の奇跡を見たことも経験したこともないのだ。
実現されるか保証のない楽園を夢見るよりは、この現実でどれだけ生きていくか、ということの方が大切だと思う。