全滅
出目金を買ってから一週間ほど経ってからボヤージュが
「ねえ、出目金の周りに白いツブツブができてる」と言ってきた。
水槽の出目金を眺めてみたが自分には見とめられない。
その日は「ちょっと様子を見てみようか」と言ってスルーした。
ボヤージュは出目金のことが気になるようで、ちょくちょく自分に言ってくる。
自分は自分で「もうちょっと様子を見てからどうするか考えよう」と言って放っておいた。
それから2,3日すると、出目金の体表全体がうっすらと白っぽくなってきた。他の金魚もなんだか元気がない。
さすがに何かまずいと思いながら、水槽の水を替えたり金魚を別水槽に入れ替えたりするのは面倒だなあ、と考えるとやる気がおきなかった。
小さいリュウキンが水槽の底にじっとするようになって、さすがにこれはいかんと思い、仕事帰りに金魚の病気に効く薬品を購入して水槽に入れた。
翌日、リュウキンの1匹が水槽に浮かんで動かなくなっていた。
その2日後にもう1匹も死んだ。
出目金は3日くらいエラを動かすだけでそれ以外にほとんど動いていないようだったが、それから少しずつ動きがよくなってきた。体表の白いモヤモヤも消えてきた。
なんとかなりそうだ、と思っていた次の日、出目金もプカリと浮かんでそのまんま。
今回は完全に自分のミスだった。
ボヤージュが異常に気づいた時に対処していれば全滅は避けられたかもしれないのに、面倒くさがって「まだ平気だろう」と高をくくっていた。
ボヤージュに謝った。
ベランダに埋める時にボヤージュに来てもらい、ナムナムした。
ナムナムしたのは自分で、ボヤージュはそれを見ているだけだったが、そばにいてくれるだけでありがたいと思った。
親が子より優れているなど、どれほどの思い上がりだろうか。
金魚もまともに育てられない人間が「親に従え」なんて恥ずかしくてとても言えない。
親だって子供の真摯な訴えにしっかり向き合わなければならないのだ。