『「偶然」の統計学』を読む
ここ数年「奇跡の××」だとか「ありえない展開」だとか、起こる頻度がものすごく低いことを謳っているフレーズをよく見かける。
そんな「到底起こりそうにない」出来事が、実は「ありふれている」というのが本書の大雑把な内容だ。
予言に関する話の中では、詳細な書き方をせずにどうにでも取れる書き方をすれば、何かが起こった時にそれらしい言葉が「当たった」とすることができること、そして予言を量産すれば、その中の何かが当たった時にそれを強調して、当たらなかった予言を無視すれば良いこと、を挙げている。「あいまいなことを書く」というのは予言が当たったようにするうまい手段なのだ。
例:あなたは近いうちに体の不調を覚えるであろう
これがある日の朝だけ起こった頭痛でも、数年後に胃潰瘍で長期入院になっても、「ああ、予言者の言った通りになった」と思い込んでしまう。
いろいろな法則が挙げられている。
興味深いのは「超大数の法則」
十分に大きな数の機会があれば、どれほどとっぴな物事も起こっておかしくない:ということ、だ。
本の中では宝くじやルーレットの話が載っている。
この本では「神々と奇跡」という内容も扱っている。
モーセによる紅海の分離についても奇跡ではなく、科学的に納得のいく説明がなされている(地震による津波が起こる前に海岸が異常な引き潮になる)。
「不可避の法則」も挙げられている。
「起こりうるすべての結果を一覧にしたなら、そのうちのどれかが必ず起こる」
例えば6面のサイコロを振ったら、1から6のうちどれかが必ず出る、ということだ。
他にも「選択の法則」「組み合わせの法則」など、ある出来事の起こる確率を増大させる法則を挙げている。
ご存知の方も多いと思うが、「1クラスの中で誕生日の同じ二人がいる可能性の方が、いない可能性より高くなるには、クラスに何人いればいいか」という質問の答えは23人、だそうだ。
直感的な答えより相当少ないと思う方が多いだろう。
このように、直感的には奇跡的であろうと思われることが、実は意外にありふれているということだと説明しているのがこの本だ。
つまらぬことを「奇跡」だと騒ぐ前に、この本を読んで「人が奇跡だと思う物事はけっこう頻繁に起こる」ことだと認識してみよう。
そう、神が介入しなくともこの世界は成り立つということを思い知るべきだ。