なおじ 原液と飲む その2
日曜日。
ソースから「今日はスポーツやるんだけど会社何時に終わる?」と聞かれた。
この問いかけは、「JW会衆主催のスポーツの集いに参加できる?」ということだ。
仕事は比較的早く終わったのでスポーツの集いのある体育館へ向かった。
途中から参加したのでバスケ2ゲームほどしかできなかったが、10代20代の若い連中にもまれて走り回るだけでも楽しかった。シュートが1回決まったのもうれしかったが。
スポーツの集いが終わった後、夕食を済ませていない方々が帰り道の途中にあるお店でご飯を食べることになっている。
いつもそれをうらやましく思っていたらしいソースが「オレも行きたい」と言い出した。
身長は低いがお腹周りは中年っぷり十分なソース。夕食を済ませた息子にカロリー上乗せをしたくはないのだが、自分も飲みたかったのでソースのお供にかこつけてついていった。
お店の前に着いてしばらくすると、1人のご婦人と息子・娘さんがやってきた。
ツマから自分のことを聞いているらしくご婦人が自己紹介をしてきたので、自分も自己紹介の後「一般人です」とウケを狙ってみたが無反応だった。
娘さんは美人の範疇に入る色白さん。中学生くらいだろうか。でもどことなく周囲に恐れを抱いているよう。JWへの偏見からかもしれないが、精神を病んでいるようにも見えた。
スポーツをやっている時には見かけなかったが最後の方に来たようだった。
いつも行っているらしきその店は貸し切りだったので、結局駅そばのファミレスに会場変更。
2テーブルに分かれて座った。
一緒になったのはスポーツの集いの責任者と、少し前にソースを野球観戦に連れて行ってくれたご夫婦とその娘さんだった。
思いつくままに話をした。
テーブルの面々はそれほど宗教臭さを感じず、比較的自由な状態だと感じた。とはいえ2世独特の雰囲気(具体的に説明できない)を感じる方もいた。
色白美人さんとは同席できなかったが、そのご家族がお帰りになった後にそれとなく話題を振ってみた。
すると色白美人の娘さんが二十歳だと判明した。息子さんは中学生だろうという予想が当たったが、息子さんより歳下だと思っていた娘さんがまさか歳上とは。
どうやら大学に進学するでもなく、働きに出ているでもないらしい。
酒によるリミッター解除も手伝って「座敷牢に閉じ込められたお嬢様、というイメージですね」と歯に衣着せぬどころか神経丸出しの発言をしてしまった。
鈍い自分は周囲の表情がどう変化したか分からなかったが、少しはチクリとした方がいたかもしれない。
ご婦人の息子さんと娘さんはしばらく集会に来ていないそうだ。
今回のスポーツの集いも、ご婦人が必死で連れてきたのかもしれない。
JWローカルの日なたばかりに目が行っていたが、所々に光の届かない「闇」が口を開いている。
座敷牢の彼女がそれまでの人生でどれだけのものを奪われてきたのだろう、と勝手な想像をしてしまう。幼く見えたのも、親に支配されて精神的に成長不全を起こしているためなのかも、と思った。
ここ数年でツマの会衆も他の会衆と合併を繰り返しているようだ。
会衆ごとばかりではなく、個人で温度差が相当違う。
1時間ほどお店で過ごして解散した。お酒好きな方も何人かいらしたので、次回は純粋な飲み会をしようと約束した。リップサービスだったのかもしれないが。
そういえばこれとは別のスポーツの集いの日。
同乗した、最近定年退職したという男性が、運転手の青年に話しだした。
「最近、ハルマゲドンの夢を見てね・・・・・」
多分それは、楽園が現実的に無理だと感じた心が投影した逆夢だと思うぞ。