コミュニケーションにカビ生えぬ
戸籍上の配偶者と暮らし始めてから約15年。その時に購入したオーブンレンジの表示機が故障した。
画面の上半分が表示されなくなり、メニュー選択で何をしたかが分からない状態。
休みがしばらくなかったところにボヤージュから「レンジみたー?」と聞かれて初めて気がついた。
休日に自分が食事を準備をしようとレンジに向かい、どうしようかと考えた。
ふと思い立ち、オーブンレンジの取説を持ってきた。
そこにメニューを切り替えた時の図が表示されていたので、ボタンを押した回数でどのメニューを選択しているかを確認しながらどうにかレンジ機能を使うことができた。
さすがにこの状態で使い続けるのはきついので、とりあえず故障を調査してもらい、修理できるものなら修理してもらおうと思いサポートに連絡した。
業者が調査した結果は予想通りで「発売から10年以上が経過しているので交換する部品がありません」だった。多少調査費はかかったが、買い替えるのに納得できる理由ができた。
炊飯器も表示パネルの電池が切れ、電源プラグを抜くと時刻がリセットされてしまうようになってしまった。フタを開けるボタンも動きが悪くなっていたので同時に買い替えることにした。
これらを一番使うのはツマだが、直接話をする気がないのでメールで買い替えの意向を伝えた。「何か要望があれば教えてください」と追記して。
翌日ボヤージュが要望を書いた紙を持ってきた。もちろんこれはボヤージュの要望ではなく、ツマがボヤージュに伝えたことなんだろう。
別段無理な要望は書いていないが、メニュー選択はジョグダイヤルではなくボタン式がいいとのこと。これまで使っていたオーブンレンジのジョグダイヤルの調子が悪く、回した方向に選択が動いてくれなかったのを気にしていたのだ。
そんな要望をもとにネットでオーブンレンジと炊飯器を注文。
長年使っていたオーブンレンジと炊飯器に感謝して粗大ごみに出した。
その日の朝。
冷蔵庫にゆでとうもろこしが入っていたので、前日自分がゆでたのを食べなかったのだと思いソースとボヤージュに「このとうもろこしとーちゃんが食べていいかね?」と聞くとツマが「昨日わたしがゆでたやつです、わたしが食べます」と入ってきた。
ちょうどよいとばかりに「それで、エアコン買い替えの見積もりをしてほしいんだけど」と言ってきた。
ツマとは会話したくないので紙に「壊れてからでいいんじゃないの?正直なところあまりお金がない」と書いてテーブルに置いた。
「壊れてからじゃ遅いので。今年も暑くなるし、いつも使っているものだから」とツマ。
「まだ交換するのは早いんじゃないの。もったいない」と書くと、
「生活費から出してもだめなんですか」とツマ。
はあ? それほど多くを渡していない生活費でエアコン交換をまかなったら、その月何も食べられなくなってしまう。ただでさえ大したもの食べていないのに。
しつこく「生活費を使っちゃだめなんですか」と繰り返すツマに切れた。
「生活費なんか使ったら食料が買えないじゃない!夏場しか使っていないのにまだ買い替える必要なんてない!」
「はあ?リビングじゃなくて東の部屋(ツマの寝室)って言いましたけど。生活費の残りを積み立てていたものがあるからそれを使ってもダメなんですか?」
こちらの聞き逃しだったのか、ツマは15年選手の自室エアコンの買い替えについて言ってきていたのだった。
東の部屋(ツマの部屋)という言葉をツマが言っていたらしいが自分の耳には入っていなかった。そもそもツマと会話をする気のない自分なので、話がまともに頭に入ってこなかったのかもしれない。とはいえ「生活費」だけじゃ意味が通じない。月々の生活費のあまりを積み立てていたことを説明してくれなければこちらも理解できない。
せめて文章にしてくれれば冷静に読めたのに、とも思う。
怒りは収まらず、ホントに余計な二言三言。
「もうすぐ終わりが来るんだから買い替えなんか必要ないだろ、さっさと滅びちまえよ!」
この怒りと言葉はボヤージュに確実に影響する。現にそれから2,3日、ボヤージュは自分に近づいてこなかった。
ああ、誰かツマの口を縫いつけてくれないか。さもなければ自分を異次元にでも飛ばしてくれい。